場所 |
ワシントン州(扱い)
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内容 |
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〜挑戦者たち〜
"デュアスロンへの挑戦"
いつものナイトランでの会話の中、
「自分は出ますよ」
YABAI最速の男"ピーター"の発した一言だった。
"にょろ"は驚愕した。
"にょろ"にとって、アイアンマン(フルのトライアスロン)完走は、人生の目標、その前段とも言えるデュアスロンへの出場は、彼にとって避けることの出来ない試練であった。
しかし、"にょろ"にとって、RUNは最も苦手とする種目。
デュアスロンともなれば、5kmとは言え、それを2度も走る。今の彼にとっては不安でしかなかった。
そしてこう言った。「よし、出よう!」目標への試練の第一歩と、ピーターに負けまいとするその気持ちが彼にその言葉を出させた瞬間だった。
レース当日の岩国米軍基地の朝は肌寒かった。
スタートラインに並ぶ"にょろ"は、いつになく緊張感が高ぶり、胸に手を当てた。
そして、その号砲は、彼にとって新しい挑戦へのスタートでもあったのだろう。
彼は、涼しげな面持ちで走り出した。
序盤はマイペースを守った。後ろを振り返ると、3人ぐらいしか見えなかった。
「これでいい」
自分に言い聞かせた。
不得手なRUNでのオーバーペースが自分にとっていかに不利になるか知っていた。
それでも、2.5kmの折り返しを過ぎた頃から、何人か抜かした。
「これでいい」
また、自分に言い聞かせた。
「最後にもう一度5kmのRUNがある。その足を残すんだ。」
自問自答を繰り返しながら走った。もう、ピーターとの差もほとんど気にならなくなっていた。
バイクラックが見えてきた。
Y-foil66メカトロニックが主人の到着を待っていた。
青いバイクにまたがったその時、"にょろ"は別人のように走り出した。
バイク、バイク、バイク・・・
得意なパートになると、自然に表情もほころんだ。
付けたばかりのDHバーを握る手にも力がこもった。
そう、"にょろ"にとっては、この時のためにと言っても過言ではなかった。それは、5kgに及ぶ減量であった。
以前ならばDHバーを握ると、つっかえてスムースなペダリングを阻害していた、その腹部の贅肉が落ちていた。彼は、その喜びとその驚きにさらにペダルを踏み込んだ。
50人近く抜いたであろうバイクパートを終え、トランジットへ走った。
「ピーターとの差1分!」
応援に来ていた"くま"の声だった。
その一言は"にょろ"の意識の底に眠っていた、ピーターへのライバル心に火を点けた。
にわかに気がせいた。
「行けるか!?」
そう、心の中で叫んだ。
しかし、"にょろ"の好調もここまでだった。
最後のランパート、やはり足が重い。折返し、1分と聞いていたピーターとの差は確実に開いた。
終盤、"にょろ"の心臓は悲鳴をあげていた。呼吸のリズムも保てない。息苦しい。距離が長く感じられた。
それでも、一歩、一歩、足を前に出した。
「絶対に歩かない!」
心に決めていた。
そしてゴール。
自分の中で達成感が広がる瞬間だった。
涙を流しながら叫びたい衝動を必死に抑えた。
「おつかれさまでした!」
ピーターだった。
勝てなかった。
しかし、得たものは大きかったような気がした。
昼を過ぎて暖かくなった会場の芝生で昼食を取った。
癒された。
そして、ゆっくり"にょろ"のデュアスロンは終わった。